ヒメが前を向いて歩くと
決めた日から
数週間が経った頃―――



「社長、コーヒー置いとくね」


「おう。
 さんきゅ」



時折見つめ合う社長と秘書…
なぜか恋人同士のような
そんな甘味な空気が漂う…



「何、この雰囲気」



社長室のソファに座り
煙草を吹かせながら
シキは眉間に皺を寄せ
目を細めて2人に問う。



「いつからそんなに
 ラブラブなんですか」



…と。



「は?何言ってんだよ」


「ラブラブって…」



『そんな関係じゃないと』と
2人で口を揃えて否定するが
もちろんそんな事は
シキに通用するはずもなく…



「ヒメちゃんは俺のだから」



そう言ってシキは
ヒメの後ろから腕をまわし抱き寄せると
耳にキスを落とした。



「ちょッ、何してんの副社長!?」



あまりに大胆な行動に
不意を突かれたヒメは
身動き出来ずに悶えてしまう。
そんな事はおかまいなしのシキ。



「手を出さないでね~ナツメ」



悪意のある笑顔で
ナツメに釘を刺した。



「わかったから離れろ。
 ココは会社だろ。
 ってか俺の部屋だ」



いつも通りの
クールなナツメが戻ってきた。

それはどこか
怒っているようにも見えるが―――