「…あぁ。
 話してくれた」


「…そう。
 ごめんね、関係ないのに
 そんな話聞かされて」


「そうは思ってねぇよ。
 良かったと思ってる。
 俺には何も出来ないかもしれないけど
 聞いて、良かった」



父親の後ろ姿を
ずっと見つめながら
昨晩聞いた話の
1つ1つを噛みしめながら
思い出していた。



「何かあったら
 いつでも聞くから…」


「社長…?」


「聞く事しか出来ないけど…
 それでも、気が楽になるなら
 俺で良ければなんでもするから…」



父親からヒメに目線を移すナツメは
優しく穏やかな目をしていた。


どうしてそこまで
思ってくれるのか

どうして父親は
ナツメに話したのか


疑問が多い事ばかりだったが
ただ1つだけ
親身になってくれるナツメが
嬉しかった。



「時間は掛かると思う。
 だけど、そんなに弱くないから。
 少しずつ向き合っていけるよ」



だから
大丈夫―――



清々しく晴れ渡る青空を眺めながら
ヒメの中で曇っていた霧も
少しずつ晴れていく気がした。

それはきっと
ナツメのおかげ…。



「仕事、戻ろっか」


「そうだな」



今日もまた
笑っていられる―――