恋をする、その先に…


意識とは別に
心の奥深くに
封印していたくらいだ。

思い出す事の代償は
大きすぎる気がした―――



「ダメ…だと思う。
 この現実から
逃げちゃいけない気がする。
しっかり向き合わないと…。
だから、思い出す」



自ら望んで決めた答えでも
頭の片隅で拒絶している。

記憶がすべて蘇ったところで
何かが変わるのか
解決するのか
そんな答えが見つからないから―――



「それでも神崎…
 もう…やめろ。
 俺はお前が―――」



ナツメが最後
何かを言い掛けた時
突然、空一面が明るくなり
次の瞬間
大きな音が鳴り響いた。


すぐ近くに雷が落ちたらしく
ヒメ達がいる会社が
一気に停電。



「マジか…
停電は最悪だな。
神崎、大丈夫か?」



真っ暗な室内で
ナツメはポケットから
携帯を取り出すと
その画面の明るさを頼りに
ヒメを捜した。


闇の中
ヒメは一言も発しず
もの音1つしない。


それは彼女の記憶が
走馬燈のように
フラッシュバックしていたから―――



しばらくすると
非常灯が点灯。

薄暗い中でも
先ほどより視界は良くなった。