話すたびに
ヒメの記憶のパズルが
組み立てられていく。
「お姉ちゃんは
4歳離れていた…確か。
優しくて、明るくて
大好きだった…と思う。
だけど残っている記憶は
アタシが大学を卒業する時まで…」
その先の記憶は
1番大事で
1番恐ろしい出来事。
モヤが掛かったように
砂嵐のように
見えない過去。
「ココ数日、夢を見る。
雨と雷…
車や病院、誰かの声も。
その夢がもしかしたら
この思い出せない記憶の
一部なのかなって思ってる」
記憶と夢が繋がりがあると
ヒメは冷静に感じ取っていた。
ナツメもまた
ココ最近の彼女の様子が違う事が
関係しているんだと気付いた。
「お姉ちゃんは
死んでしまった…
その時たぶん
アタシ…」
際どいところまで
記憶が戻ってきているのか
ヒメは小刻みに震え出した。
「神崎…?」
「お姉ちゃんだけじゃない。
お母さんも…
それもアタシは…」
ムリヤリこじ開けようとしている
記憶の扉。
少しずつハッキリし始める
過去の闇。
「それ以上
無理に思い出そうとするな。
お前自身が、壊れる…」
ナツメにとって
それが1番怖かった。


