あんなに快晴だった空は
いつの間にか雲が増え
少しずつ雨が降ってきた。
それは徐々に大粒になり
ヒメが秘書室に戻り
放心状態になっている間には
大雨へと変わっていた。
“空が泣いている”
そんな空を見つめていると
また1つ思い出す。
「お姉ちゃんは
死んだんだ…」
…と。
――コンコン。
「神崎、入るぞ」
ドアが叩く音がし
ナツメの声も聞こえてきた。
ゆっくり振り返ると
眉間にシワを寄せ
心配そうな表情で立つナツメの姿。
「ごめん…
仕事中なのに
私情を挟んで…」
「気にするな。
何かあったんだろ?
さっきに人と」
感付いているナツメに対し
ヒメは首を横に振った。
「あの人と何かあったワケじゃないよ。
“思い出す”キッカケを
与えてくれただけ」
「思い出す…?」
ヒメは
思い出した少ない記憶を
話し始めた。
「アタシには
姉と母がいた…みたい。
曖昧な言い方だけど
今の今まで忘れていたから…。
もうずっと
考えないようにしていたのに…」
コレを聞いたナツメは
ヒメが“ただ忘れていた”
ではなく
封印させていた事を悟った。


