「佐伯と申します」
名刺を渡されながら
紹介されたのは
ウェブデザイナーの
“佐伯エリナ”
黒髪のショートボブと
パンツスーツがよく似合う
20代後半の
キャリアウーマン。
「秘書の神崎です」
ヒメも自身の名刺を手渡し
挨拶を交わした。
すると
佐伯はヒメの名刺を見ると
少し考えてハッとし…
「もしかして
ヒメちゃん!?」
「え…」
なぜか急に
親しみ込めた呼び方をされた。
しかしヒメは
彼女を知らない。
「あの…
アタシをご存じなんですか?」
恐る恐る尋ねると
佐伯から返って来た返答は
意外なモノだった。
「んーっと
たぶん会うのは
今日が初めてかな。
だけど、ヒメちゃんの話は
いつも聞いていたよ。
お姉さんから」
“お姉さん”
そのワードに
ヒメの奥深くに封印されていた
記憶の扉の鍵が開いた音がした。
「似てるなぁとは思ったけど
やっぱり妹だったんだね。
会えて嬉しいッ」
話についていけず
困惑しているが
佐伯は話を続けていた。
「彼女とは高校からの仲だったんだよ。
一緒に同じ道を進むために
お互い励まし合ったりしてね。
明るくて可愛くて
毎日が楽しかった」


