「ジルヴァラ連絡しとこーっと。
仕事戻るけど
考えといてね~」
ヒラヒラと手を振りながら
まるで風のようにフワッと
社長室を去って行ったシキ。
嵐が去ったように
静寂に包まれるヒメ達だけが
残った。
「…急にごめんな。
驚かせて…」
スッと掴んでいた手を解放。
見つめていた視線も外した。
「どう…したの?」
「それはコッチのセリフ。
どうした?
そんなに震えて」
“震え”
そう言われてハッとした。
自分自身が気付いていなかったのか
両手を見るとずっと小刻みに
震えている。
気を紛らわす事に集中していて
意識なんてしていなかった。
けれど現実
“恐怖”の証拠だ。
「その表情だと
自分でも気付いていなかったか」
誰よりも
ナツメが最初に気付き
今も表情で見透かされている。
「なんでも…ないよ
心配掛けてごめん」
それしか答えられない。
本人ですら
何が起きてるのか
理解していないから。
「…わかった」
あまり多くを
答えようとしないヒメに
ナツメも深くは追及しなかった。
人の弱みを無理やり引き出し
追い詰めたくはないから。


