「ねぇ、今日って
2人とも仕事は定時終わりだし
それにこんな雨だし
ってなワケで
ジルヴァラ行って酒飲もう!」
また急なシキの誘いに
ツッコミたい部分は多々ある。
「お前は俺達のスケジュールを
しっかり把握してんだな。
“こんな雨だし”の
意味がわかんねぇよ。
飲みに行きたいだけだろ」
あいかわらず
ナツメが片っ端から拾い
ツッコミを入れる。
なんとも良いコンビネーション。
「酒は関係あるよ~!
天気が悪い時は
酒に限ると思うんだよね~」
『我ながら名案』と
自画自賛するシキに
『お前だけだろ』と
見事にかわしている。
そんな会話を
ヒメは黙って聞きながら
ナツメのデスクに
静かにコーヒーを置いた―――
…と、すると。
「え…」
グイッと
なぜかナツメが
ヒメの手首を掴んだ。
少し驚きナツメを見ると
彼もまた
ヒメの目をジッと見つめて
一言だけ小さく呟いた。
「大丈夫か…?」
…と―――
何に対してか
まったくわからなかったから
頷くしか出来ない。
しかしナツメは
ほんの少しだけ眉をひそめ
心配そうな表情をしている。
その間は
まるで時間が止まったように
長かった―――


