「悪い。
少しでいいから
近くのコンビニ寄って」
「え、あ、はい!」
なぜか突然
ナツメがコンビニに行くよう指示。
仕事中に行く事がなかっただけに
運転手もヒメも何事かと思う。
コンビニに到着するなり
ナツメは何の躊躇いもなく
傘も差さずに店内へと入っていく。
ヒメはその後ろ姿を
ただ無心に見つめていた――
少しすると
ビニール袋を持ったナツメが
車内へと戻ってきた。
「飲んで少し深呼吸しろ」
「え…」
そう言ってヒメに手渡したのは
ペットボトルの水。
“ヒメの様子がおかしい”と
気付いたナツメは
急遽コンビニに立ち寄り
休ませようと考えたのだ。
「あ…りがとう」
「大丈夫か?」
「うん。平気…」
水を二口・三口飲み
溜め息にも似た深呼吸をすると
少し落ち着いてきた。
「ごめん。
雷くらいで驚いて…」
「気にすんな。
どうする?
会社に戻るか?」
「戻らないよ!
仕事は仕事。
アタシの事は気にしないで
行こッ」
強く押し切られ
ナツメも承知し
運転手も複雑そうに
車を発進させた。


