(え…なんだろ…
この感じ)
ヒメは急に
妙に心拍数が上がるのを感じた。
それはとても
何かイヤは雰囲気の…。
「どうかしたか?」
乗る手前で躊躇してしまったから
ナツメが気にして
車内からヒメを見上げている。
「あ、ううん…
なんでもない…」
“雷の音に驚いた”
ただそれだけだと自分に言い聞かせた。
車内では
運転手とナツメの
穏やかな会話が飛び交う。
「どこか近くで落ちたんですかね」
「出来れば早めに切り上げて
俺は帰りたい」
「ナツメ様
もしかして
雷が苦手ですか?」
「誰でも好きなヤツはいねぇだろ」
…なのに
ヒメの耳には入って来ない。
なぜかずっと
外の雨音と“車”という乗り物に
無意識に体が強張っていた。
「神崎…?
さっきからどうした?」
何かを察したのか。
何度かナツメが気に掛ける。
「…平気。
たぶんさっきの雷に
驚いただけ…。
次の予定を確認してるね…」
何とか声を絞り出し
気を紛らわすように
鞄から書類を取り出し
見ているフリをした。
「アレは驚きますよね。
まだ光っていますし
またどこかに落ちても
おかしくないですよ」
運転手の話に
小さく頷く事しか出来ない。


