「雨すげぇテンション下がる~」



社長室にて
ソファでくつろぐシキを尻目に
ナツメは書類に目を通している。


シキがごく普通に当たり前の如く
社長室に入り浸っている事については
ナツメももう何も言わなくなっている。

ただし。



「ココは禁煙。
 吸うなら喫煙所行け」



コレについてだけは
絶対に譲らないが。



「マジでこの時期、最悪」



『髪型が上手くキマらないし』と
髪を気にしながら付け加えている。

なんとも副社長という立場の
欠片もない。



「社長。
 そろそろ出掛ける時間」


「そうだな」



腕時計を見つつ
次の日程を説明し
シキと別れたヒメ達は
移動するために
社長専用車へと向かった。



雨は更に勢いを増している―――



「こんな日に外出は
 シキじゃないけど
さすがに俺も気が滅入るな」



珍しく弱気な発言をするナツメは
溜め息を零しながら
渋々車に乗り込んだ。



「確かに
 あまりいい気がしないね」



ヒメも苦笑しながら
車に乗り込もうとした。


その時―――



一瞬、空一面が明るくなり
少ししてから地面にまで響くほどの
大きな雷の音がした。



そしてその音が
“ある出来事”を思い出させる
始まりの合図だった―――