「前は確かにいたね。
 こっちが求めなくても
 近付いてくるコ達が」


「前は…?」


「今はもう全員と縁を切ったよ」



まさかの発言に
ヒメは少し驚いた。

嘘か真か
半信半疑だったが。



「どうして…?」


「んー…
 女のコって何考えてるか
 よくわかんないからかなー」



『その言葉そのまま返したい』と
シキに対して思うヒメ。



「素直で正直なら
 可愛いんだけどね。
 女のコって裏が怖いから」


「…ふーん」



シキの意味深な発言に
疑問を感じたが
それほど深くは考えていなかった。


でも実は女性達を切ったのは事実。

それはヒメと出会い
彼女を想うようになったから。

そして数日前の
女性社員達の“嫉妬”
その陰口に嫌気がさしたのが
決め手だった。



「俺にはヒメちゃんがいてくれれば
 それだけで十分だよ~」


「十分って…。
 またそういう事を言うんだから。
 アタシは仕事に戻るよ」



元気になったシキに挨拶し
ヒメは今度こそ部屋を出て
会社へと戻っていった。


途中、ナツメから連絡が入り
何事もなかったのように
報告だけ済ませて――




結局あれから1度も
シキがヒメに“キス”の話題を
持ち出す事はなかった。

お互いの胸の内だけに
閉まっておく事にした―――