「仕事戻るの?」



お粥を食べながら
支度するヒメに声を掛けるシキ。



「さすがにあまり空けられないし。
 あ、でも明日には社長が帰ってくるよ」


「やっと解放される…」



安堵の表情を浮かべるシキに
ヒメも少し安心していた。

この1カ月
社長代理として
本来の自分の業務を行いながら
働き続けていた事を知っていたから。

「副社長は
 まだゆっくり休んでね?」


「はーい。
 あ、でもまた熱が出れば
 看病してくれるんでしょ?」



すでに決定しているような口ぶりだが
もちろんヒメはそんな約束はしていない。



「バカ言わないで。
 あれは副社長が…」



そう言い掛けて
口を噤んでしまった。

『心配で放っておけなかった』
…なんて言ったら
きっとまたシキが調子に乗るからだ。



「俺がどうしたって?」



ヒメの言いたい事に気付いているのか
不適な笑みを浮かべるシキ。

『遊ばれているな』と確信する。



「アタシじゃなくても
 他の女のコがいるでしょ?
 看病には困らないと思うけど?」


「他の女のコねぇ…」



ズルイ方法だが
間違っていないだろうと思い
違う女の存在で誤魔化しを図った。