「いい歳して
熱で抑制が利かなくなるとは…」
後悔の溜め息が零れたが
確かにあの時
本気でヒメを押し倒したい欲求に
駆られていた。
それほど愛おしく
彼女を求めてしまった―――
「好き…だよ
ヒメちゃん…」
完全に自分の気持ちに気付いたシキは
聞こえるか聞こえないかほどの
微かな声で眠るヒメに囁く――
頭から離れないのは
硬直した時のヒメの表情。
ヒメに対する愛情はあるが
困らせるつもりはないために
目が覚めた時
何事もなかったかのように
ごく普通に接するつもりでいた。
なのに…
「無防備はカンベンして…
気付いてないよね。
今キミは
男の部屋で2人きりなんだよ?」
――抱きたくなる――
眠るヒメの頭を
そっと撫でながら
理性と戦っていた。
彼の中で
ヒメには他の女とは違う“何か”が
あるんだと感じている。
男に媚びず
自らの危険を放置してまで
相手を守り気に掛ける。
そんな女と出会ったのは
初めてだったからか。
「頭、冷やしてくるかな」
このまま寝顔を見続けて
また襲いたくなる衝動に
駆られる事を恐れ
シキは逃げるように
リビングを後にした―――


