「特に5か国語を話せるのは
戦力になるからね」
履歴書に書いてあった内容は
有力情報だったようだ。
確かに何かの役に立つかと思って書いたのだが
ナツメの目に留まるとは思いもよらなかった。
「そう言われても
本当に秘書って仕事をした事ないし
無知すぎて役に立てる自信がないんだけど…」
「やれば覚えるから平気っしょ。
新しい挑戦だと思って頑張って」
ほぼ強制的だが
社長自ら頼み込むなんて
このご時世、珍しい事だと思う。
ヒメ自身
仕事を探している事は事実だし
まだ見つかっていないのも現状なワケで…
社長直々に言われる事なんて
もしかしたらコレは“縁”なのかもしれないと
前向きに考え
挑戦してみる事にした。
「頑張ってみます…」
「よし。
そうと決まればさっそく仕事。
ついてきて」
そう言いながら
早々と社長室を出ていってしまうナツメ。
時間に追われているのか
終始、忙しく動いているようだった。
向かった先は
社長室のすぐ隣に位置する秘書室。
中はシンプルに白1色で
デスクとソファ
テーブルと本棚しか置いていない。
デスクの引き出しと
本棚が空っぽなところからして
誰も使っていなかったのが窺える。


