「んー…っと。
必要なモノを揃えたいところ…」
体温計や氷枕
薬や飲料水等。
何かと準備したいのだが
一度入ってしまったこの部屋は
強度のセキュリティ。
オートロックな上に暗証番号
カードキーまで使用するから
簡単に出入り出来ないのだ。
「困った。
人の部屋を物色するのもねぇ」
それも副社長という立場の
“男”の部屋を。
「…本人の許可を貰うか」
寝込み襲うワケではないが
方法がないから仕方ないと
自分に言い聞かせるしかなかった。
「辛そうなのにごめんね?
体温計とか探したいから
ちょっと部屋の中、見させて?」
「ヒメちゃん…」
「ん?」
苦しそうに弱っているシキが
まるでうわ言のようにヒメを呼ぶから
何を言っているのか聞こうし
顔を近づけてしまった。
すると―――
「えッ…」
病人とは思えない力で
突然シキがヒメの腕を引っ張り
彼女の唇を奪ったーー
それはあまりに
熱い…“キス”
熱のためなのか
唇を通じてシキを感じる――
逃げようにも
あまりに突然すぎて
体が硬直してしまった。
しかし
先に離れたのは、シキの方だった。


