恋をする、その先に…


フラフラした足取りで
部屋に到着すると
虚ろ虚ろしながらも
暗証番号を入力し
財布からカードキーを取り出し
中へと入った。



「アタシは帰るけど…
 動ける?大丈夫?」



もはや母親のような心遣いだ。



「ん…
 これくらい余裕…」


「そうは見えないけど…」



ゆっくりと
室内へと入っていくシキの後ろ姿を
ヒヤヒヤしながら見つめていたが
こういう時に母性本能というものが
出るのだろう。



「放っておけるワケがないでしょ…」



結局、ヒメも室内へと入り
シキを寝室のベッドまで支えた。


彼の部屋は
なんとも真っ白な…
シキには似合わない色合いだ。

ダブルベッドに間接照明。
隅には観葉植物まで配置されおり
60インチ以上はある大型テレビに
まさかのステレオまで完備。
1人にしては無駄に大きなソファが
テーブルを囲むように設置している。



「やっぱり金持ちは違う…」



部屋を見渡して感心するばかり。
しかも
しっかり整理整頓までされている。

…が。
今はそんな事を言ってる場合ではない。



「ゴホッ…」



苦しそうに横になるシキは
時折、咳き込み息を荒くしている。

熱が上がってきている事は
すぐに理解した。