「アタシは仕事が残っているから
行きません」
まるで駄々をこねる子供に
しつけをする母親の如く一喝。
「帰るまでに
俺が倒れているかもしれないよ?」
「いい大人が
何言ってんの」
『本当にこの人は…』と
半ば呆れてしまう。
仕事をしている時は
しっかりしていて責任感もあり
何かと頼りになるのに
仕事から離れると
本当に女好きのチャラい男だと。
「…もう少し休んでから帰る」
「副社長…?」
「ごめん…
調子乗りすぎたみたい…」
弱々しくヘラッと笑うシキが
とても辛そうに見えて
実はかなり具合が悪いんだと悟った。
「あーもう。わかったよ。
マンションまでついて行くよ。
但し、部屋までは入らないよ!」
しっかり釘を刺し忠告するが
シキからの返事は意外なものだった。
「ありがとう…」
「え…?」
散々喋ったからだろうか。
言葉を発するのすら苦しいほど
シキは限界に達していた。
「歩ける?」
「平気…。
頭は痛いけど…
まだギリ動ける…」
無意識にも
“倒れるワケにはいかない”と
思っているらしく
ヒメに支えてもらいながら
マンションへと歩みを進めた―――


