「え、大丈夫!?」
「平気…平気。
誰かに頭を殴られたのかな。
すげぇイテェ…」
『はぁ…』と溜め息を漏らしながら
未だ頭を押さえている。
「ちょっとごめんね」
“もしかして”と思ったヒメは
シキの額に自分の掌を当てた。
「やっぱり…
熱いね…」
どうやら風邪を引いたらしく
シキの体は熱を発していた。
「ヒメちゃんがすごい近い…
このまま襲っちゃおうかな…」
「はいはい。
こんな時まで
そんな事が言える元気があるとはね。
さっき社長から連絡があって
今日の予定は全部キャンセルになったから
副社長は帰って寝て!」
シキの反応を見る事もなく
ヒメは一通り喋った。
「え…キャンセルって…
大丈夫なの?
他にもいくつか予定入ってるよね?」
もちろん初耳のシキは
少し驚いた様子だ。
「あとの事は大丈夫だから。
安心して。
それより今は自分の体の事だけ考えて?」
『さぁ荷物を持って帰る帰る!』と
ほぼ強制的なヒメの行動に圧倒され
何がどうなっているか
説明もないまま帰宅を促された。
すると―――
「ヒメちゃんも
一緒においで」
熱で気がおかしくなったのか
もともとなのか…
シキに誘われてしまった。


