「帰って少し休んで?」
「平気、平気。
まだ残りの仕事があるし
俺はそんなにひ弱じゃないからね」
弱々しく言いながら煙草を吸うシキは
とてもそんな風には見えなかった。
「…じゃぁ次の予定の時間に起こすから
帰って少しでも寝て?」
「ヒメちゃんに起こしてもらえるの
ラッキーだぁ…。
優しくキスして起こしてね~…」
冗談を言いながらも
やはり元気がまるでなく
調子が狂う。
心配しながらも
これ以上は何も出来ず
『秘書室にいるから何かあったら呼んで』
とだけ伝えて、副社長室を後にした。
自室に戻り
カタカタとパソコンで
自分の仕事をしていると
携帯のバイブレーションが響いた。
着信元は【ナツメ社長】
「お疲れさまです」
『お疲れ。
メールは見た。
報告ありがとうな」
ヒメは1日の終わりに
毎日必ずナツメに報告メールをしていた。
社長秘書としては会社の状況等を
把握・報告する義務があるからだ。
『こっちの方は
意外にも早く片付きそうだから
そっちに戻る日が早まると思う』
「あ、本当?
それなら安心した」
シキのためにも
1秒でも早く帰って来てもらいたかった。


