―――副社長室。
「あ、戻ってきた。
副社長が席を外してる間に
何人かの社員がココに来て―――」
まさかシキと女性社員達の間で
そんな話があったとは想像もしていないヒメは
ごく普通に仕事の話題を振る。
シキは何も話さず
そして話も聞いていない様子。
「どうしたの…?
大丈夫?」
あまりに無口はシキに
“いつもと違う”違和感を感じ
少し心配になるヒメ。
“納得出来ない事や許せない部分は
誰にでもあるから“
シキは、ふと思い出し
その意味を理解した。
“もしかしたら彼女は
女性社員が言っていた話を
情報として知っていた。
あるいは、聞いていたのかもしれない“
知った上でシキに話す事も
女性達を責める事もしないのだと。
「ヒメちゃんには
敵わないよねぇ~」
「は?」
なぜ急にそんな事を言うのか
何に対して“敵わない”のか
シキの謎めいた発言と笑顔に
どういう意味か聞き返すが
答えてはくれなかった。
釘だけ刺しておいたから
さすがにコレ以上は
何も手を出してこないと
シキは彼女達の表情で悟っていた。


