ヒメはそんな扱いも
仕方のない事だとは理解していた。
イケメン兄弟の1番近くにいて
いつも一緒にいるのだからだと。
そう思うと
前の秘書の事を考えてしまう。
よっぽど厚い信頼と愛情で
誰からも好まれていたらしいから。
(どんな人だったのか
ますます気になるなぁ…)
ナツメは
その人の話をしない。
それが何を意味しているのか
どんな理由があるのか
更に気になってしまう。
「大丈夫?」
「え…」
ボーッとしていたらしく
心配そうにシキに声を掛けられ
現実に引き戻された。
「疲れてる?
平気?」
社長がいない中で
誰よりも荷が重い責任と仕事量に
耐えているのはシキの方だ。
それなのに
“自分が心配されているようでは
いけない“と目を覚ますヒメ。
「大丈夫。
ごめんね、考え事していただけだから。
仕事に戻るね」
つい、前の秘書の事が気になり
考えてしまうが
こんな時にシキに迷惑を掛けるワケには
いかなかった。
そしてもちろん
シキに秘書の事を聞く事も
しなかった。
本人が言いたくない以上
間接的に聞き出すのは
やはり良くないと考えたからだ。
しかし
別のところから
シキの耳に入る事になるとは―――


