社長の留守の間は
副社長室にて秘書業務を行っているが
普段とは違う相手の秘書だ。
不思議な感覚だ。
「副社長、今日の予定だけど――」
「全部キャンセルにして~」
「…は?」
月の半ばまで来ると
予定すら耳に入れたくないらしく
こんな調子だ。
「出来るワケないでしょ。
大変だと思うけど頑張って」
「ヒメちゃん厳しい~
鬼~
休ませてよ~」
シキの気持ちもわからないでもない。
ナツメが出張に行ってから
シキは早朝から深夜まで
土日も休む事なく
ひたすら働き詰めなのだ。
過労死が心配になるレベルだ。
「…大丈夫?」
「大丈夫…しか言えないっしょ。
よし。仕事しよ」
気を引き締めて
パソコンに向き合うシキは
さすが“副社長”だ。
――コンコン。
『失礼しまーす』と
副社長室に入ってきたのは
ナツメの前秘書を褒め称えた
女性社員数名。
部屋に入るなり
ヒメがいる事に一瞬驚き
そして一瞬、イヤそうな表情をした。
冷たく睨むような瞳で
ヒメを横目で流したのだ。
(感じ悪いなー…)
大方
“社長が留守だからって
今度は副社長に手を出してる“とか
そんな辺りだろう。


