「だ、大丈夫ですか!?」



カウンター越しにギンは心配して覗き込むが
すぐに駆け寄って拾うのを手伝えない。



「平気、平気。
 落としただけだから」



床に散らばった雑誌を拾おうとすると
いつの間にかすぐ隣に立っていたナツメが
代わりに拾ってくれていた。



「ど…どうも」



意外すぎる行動に
思わず呆然。

冷たい男なのかと勝手に予想していただけに
そういう優しい行動をした事に
驚いてしまった。



「仕事探してんだ?」


「…まぁ」



本当はバレたくなかった。


『仕事探してるのに酒飲んでいるのか』と
説教じみた事を言われるのがイヤだったから。



「…だからスーツなんだ。
 今、履歴書とか持ってるか?」


「はい?
 なんでそんな事…」


「いいから。
 あるなら見せて」



半強引に言われ
断ればいいものを
酔っ払いの思考は低下しているらしく
鞄に入っていた封筒を
ナツメに渡してしまった。


急に隣の席に座り
履歴書を拝見するナツメ。


ヒメは困惑し
ギンに目で『なんなの、この人は』と訴えるも
ニコニコと穏やかな笑顔を向けるだけ。