「なんでお前がいるんだよ」



険悪なナツメの隣に
ちゃっかり一緒について来たのは、シキ。



「だってヒメちゃんの
 ドレスコードっしょ?
 早く見たいもん」



なんとも素直なシキに
ナツメもヒメ自身も
それ以上は黙ってしまった。



「絶対ピンクっしょ!
 でも白もカワイイなぁ。
 いや…案外、黒もイケるかも」



シキは真顔でブツブツ言っているが
内容は完全に
自身の下着の好みのセリフだ。



「仕事のパーティーだ。
 色はネイビーかブルーの
 シンプルなものにしろよ」


「もちろんそのつもりだよ」



むしろ
そんな派手な色にするつもりは
まったくなく
出来るだけシックに寒色系な色で
まとめたかった。


秘書とは言え
影の存在でいたかったからだ。



「ネックレスとピアスは
 やっぱりコレっしょ」



シキが選ぶは
キラキラとド派手に
光輝くモノ。



「ピアスは揺れないモノ。
 ネックレスは落ち着いたコレだ」



完全に全否定のナツメ。
シキとは真逆を選ぶ。



なんだかんだ数時間
ナツメとシキとの間で
意見がすれ違いながら
店を転々とした。


兄弟の間で振り回されながらも
ヒメは少しだけ
この状況が楽しく思えていた。



仕事以外で
こんな2人の姿を見る事はなかったからだ。