「マスクしてるけど
 風邪でも引いた?」


「いや…
 そういうワケじゃないけど…」



二日酔いだと否定している間にも
気付けばすぐ近くまで来ていて
この状況で中に入る事が出来ない。


逃げるみたいで
そんな怪しい行動は
さすがに出来ない。


さっきの事情を見た事は
もちろん言うつもりもない。
本人が言わない限り
触れづらいからだ。



「昨日途中で帰った?
 ナツメもいないし
 2人で抜け出したのかなーって」


「抜け出した…と言うか
 なんと言うか…」



言い訳の理由を考えていなかったため
回答に四苦八苦してしまう。
自分でもわかるほど
明らかに誤魔化せていない。



「…まぁ、いっか。
 気にしないでおくよ」



質問攻めで
根こそぎ聞き出されるかと思ったが
思ったより早く解放された…
と、思っていたが。



「ナツメにお持ち帰りされたなんて
 考えたくないからね。
 だからそれ以上は聞かない」



深く追及されなくて済んだが
完全に勘違いされている。



「今日は休み?」


「うん…まぁ。
あ、そういえば
 社長が捜してたよ?」



この流れで“シキの別室”に
連れて行かれるのを阻止するため
話を逸らす方法を考えた。