(一匹オオカミっぽいところは
確かに社長らしい雰囲気あるわ)
あんまり社長という人物と
仕事以外で関わる事がなかったため
この男ともこれっきりだと思っていた。
「ラスト1杯飲んだら帰ろっと。
マスター、強いのおかわり!」
「え?つ、強いのですか?
大丈夫ですか?
もうすでに結構飲んでると思いますけど…」
「大丈夫、大丈夫。
お金なら心配しなくても
まだそこまで落ちぶれてないから」
心配そうに戸惑うギンに
ヒメは軽くあしらった。
「お金の心配じゃなくて
ヒメさんの体の心配を…」
「平気、平気」
ギンの心配をよそに
グラスに注がれたシャンパンを
味わいながら飲み干した。
「荒れてんだな」
物静かに酒を飲んでいたナツメは
ボソッと小さく呟いた。
「マスター
帰るから会計する」
そう言ってヒメは
財布から諭吉を1枚出すと
カウンターに置いて立ち上がった。
けれど
さすが酔っ払い。
「おっとっと…」
フラフラ~っとしながら
置いといた求人雑誌を
バサバサと床に落としてしまった。


