「悔しいけど、花織と凌平の力を借りないと解決できないんじゃないか?」

「……そうかもしれないけど、あの二人は桃花さんの遺体を初めて見つけたときも、消えた瞬間も、再出現した今も、現場に居合わせてないんだよ?推理するには無理があるよ」

夢希が答えた。

「せめて警察を呼べたら……」

「そうだね……」

そのとき、ポケットに入れていたインカムが震動した。

『お前らどこにいるんだ?教室に早く戻ってこい。合宿はやめて直ちに帰させることにした』

山田先生だ。

「帰るって……どうやって?」

『崖を降りて帰る』

崖を降りる!?

正気かよ!

「何言ってるんですか!てか、忍さんと桃花さんはどうするんですか!?」

まさか置いて帰るのかよ?

『俺たちがここにいても解決にならないんだ。それに、犯人がいるかもしれないこの建物に生徒たちを留まらせるわけにはいかない』

「犯人を野放しにするんですか?」

『帰ってから警察に知らせるさ。余計な心配はせずに早く教室に戻ってこい。いいな!』

そんなのあり得ない。

遺体をここに放置するってことだろ?

「しょうがないよ。行こう、皆」

夢希はさっさと部屋を出ていった。