ガチャリ、とゆっくりドアが開いて最初に顔を出したのは重いドアを一生懸命開けるちーくんでした。

「ちーくん!」
「お~も~い~~~!はぁ、おもい。あーちゃん、ありがとう。いらっしゃい」

一生懸命ドアを開けるちーくんのお手伝いを外からしてあげた杏。

「りょうちゃんは?」
「ここにおるよ。杏ちゃん、いらっしゃい」

後ろから出てきた涼ちゃんはちーくんと杏が開けてる玄関のドアを支えて大きく開く。
そのタイミングにちーくんと杏は涼ちゃんの家に飛び込んでいく。
「走ったらあかん!!」って叫ぶ涼ちゃんと、それを聞かずに走って中に入っていく子供を見て苦笑する私達。

「ごめんな、おっきい声出して。杏ちゃんのことは任せて!あとから涼介も来るし、お風呂も入れてくれるからゆっくりしてくれていいよ」
「ありがとうございます。久しぶりなので、満喫してきます!」
「うん!身体に気をつけてね」
「お前に言われるまでもない」

今まで口を閉ざしていた京ちゃんの言葉に涼ちゃんは苦笑しながら「そらそうやね」と返事をしました。

涼ちゃんが身体の心配をしてくれる度にこうして京ちゃんは突っかかります。
京ちゃん的には自分がいるんだからっていう気持ちがあるんだと思うんですが、言い方があまりにもキツイので涼ちゃんも何も言わずに返事をしてくれました。
こんな京ちゃんを見ているとメンバー以外で友達はいるのかと結婚しても心配になります。

涼ちゃんには出会った時からこんな態度をとるので嫌いなのか尋ねてみたところ、「どうでもいい」と返事をしたので、嫌いではないんだと思います。
嫌いだと杏を預けたりしないと思うので。

「じゃあ、お願いします。ナリくんにもよろしく言っててください」
「わかった。じゃあ、二人とも気をつけてね」

涼ちゃんに杏を預けると一度家に戻り、車に乗って目的地に向かいます。

「どこに行きたい?」
「ん~、夜景の見れるところ」
「まだ昼真っ盛りだぞ」

京ちゃんがあたしの行きたいところを聞いてくれるのは付き合い始めた頃からで、検討違いな返答をするあたしに呆れて返事をしてくれるのも変わりません。

本当は行きたいところをちゃんと決めているんですけど、あたしの返答に呆れ口調だけど顔を緩ませてくれる瞬間を見るのが好きで、いつもこういう返事をするんです。
優しい顔をする京ちゃんの顔を横目で見るのが好きなんです。

「嘘。動物園に行きたい」
「その身体で歩くのか?」
「大丈夫!もう3度目だよ?自分の身体のことは自分でちゃんとわかってる」

もうすぐ臨月に入る身体を心配してくれる京ちゃんは散々渋りましたが、押し切り勝ちで動物園に連れて行ってもらえることになりました。

「辛くなったら、すぐに言うこと」
「うん」
「しんどくなったら、すぐに言うこと」
「うん」
「休憩はこまめにすること」
「大丈夫。大丈夫よ、京ちゃん」

私が微笑むと京ちゃんは数秒眉間に皺を寄せたけど、言い出したら聞かない性格を知り尽くしてか困ったように私の頭を撫でてから手を引いて歩き始めました。