学君が合図をすると、クラスメイト達が一致団結で手早くギョタク作りの準備をし、バケツに墨汁が注がれた。墨は僕達全員の習字の道具だけでは足りず、文房具屋の小西君が墨汁を用意してきてくれていた。

女子達が、割烹着を着てゴム手袋をはめ、ペンキ用の筆でかつお君の体に墨を塗り始めた。

『ウヒ、ヒヤァァ～～～～ッ、や、やめて、まじ、お願い、やめてぇーん♪』

かつおくんが、やめてと言おうが、女子達はその手を止めない。

『ヒヤァァ～～っ、ヒィ～ッヒヒヒヒ、ヒィィ。にゃひにゃひぃ！』
「ちょっとは黙ってろよ、墨がはねるんだよ、バカまさお！」
『だって、だって、筆がくすぐったい。それにボク、真っ黒？』
「あたりめーだろ、墨だもん。大丈夫だよ、終わったらすぐ洗ってやっから」

そうやって、2枚のギョタクを取り終えたら女子達はかつお君をスグ水場へ連れて行って、かつおくんの身体の墨を洗い流しに行った。

かつお君がキレイサッパリになって戻って来た時にはギョタクも墨が乾いていて、今度はそれを持って、かつお君を交え、みんな携帯のカメラを向けて記念写真を撮りだした。

「誰か、私のシャッター押して。」
「あー私のも押して押して！！」
「はい、じゃぁ、行きまーす。１＋１＝？」と誰かが言うと。
「ニー！」と叫ぶ。