ボクの憧れの存在だった、不思議な親友が死んでしまった。
殆ど出席する事も無かったかつお君の、いつもとかわらない空席に花が添えられていて、実感のわかない親友の死は現実にあった事だと思い知らされて、その花を見るたびに、カッコ悪く涙なんか溢れ出てきてしまうから、僕は授業中、一生懸命勉強に集中しようとしていたのに、それさえも手につかない。

かつお君は一年生の頃から、学校には殆ど来る事が無かったから、いつもと変わらない毎日だったけど、学校帰りも、学校に行く前の朝も、学校のプリントをかつお君に届けるために病院に立ち寄る事も、もう無いんだなーと思うと、とても淋しく思えた。

夏休みには、にぎわっていた海水浴場も今じゃ観光客がいなくなって人足がなくなり、ひっそりとしている。

9月8日。
かつお君が死んだ日から十一日が過ぎた。

かつお君と最後に会った日の会話がどうしても気になって、あの日以来僕は毎晩月を見ていた。
だんだん月が満ちてきて、昨日はもう殆どまん丸に近い形をしていたので、確実に今日は満月のはずだった。

かつお君と約束した満月の夜。
今日、何があるのかはわからないけど、とにかく海へ行かなきゃ。

僕は、学校が終わって、宿題が終わって、夜ご飯も食べ終わって、お風呂に入って、眠ったフリをして、その夜中、窓から家を抜け出して約束した海水浴場へやって来た。