コリンちゃんが大喜びしてくれて、かつお君は大満足の様子です。

 そこへ清君が謝ってきた。

「将太君ごめん、僕、靴の紐ほどけちゃってて、それで・・・。」
「うん、大丈・・・夫、結果オーライ・・・だよ。ハァハァ・・・」
「みんなゴール前でスタミナ切れだったらしいよ。将太君スゴイね。みんながスタミナ切れしてた時、逆にラストスパートでスピードアップするんだもん。応援席みんな興奮だったよ。」
「そう言えば僕、この1ヶ月近く毎日のように、四六時中・・・かつお君背負ったりして、遊び歩いてたから、・・・知らないうちに体力でも付いた・・・かな・・・?」
「そういえば将太、なんか、ふくらはぎの筋肉とか、前より逞しくなってるかも?」

そこへ5班の香織ちゃんがやってきた。

「はい、将太くん。ハンカチ、ぬらしてきたよ。」
「香織ちゃん・・・。」

香織ちゃんは光の中でにっこり微笑んでいる。
全速力で燃え尽きた後の僕にとっては、なんて有り難い!と思える最高級の親切だった。

「それとスポーツドリンク、昨日凍らしておいて朝冷凍庫から取り出してきたから、冷たいし、気持ちいいよ。」
これまた、疲れている僕には最高の届け物だった。

「あ、ありがとう。」
「香織よぉ、おめぇは5班のメンバーだろ。が敵にサービスしてどうするよー。俺も疲れたよー。冷たいのほしいー。」

そう言って横入りしてくる学君。

「学ブー、走ってもいないのに何を甘えてるの?べーだ!気にしないで、将太くん、私、別に学君のことなんか何とも思ってないし。」
「は?はぁ・・・。」
「香織ちゃんは相変わらず将太将太ってよぉ、凝りねー女だな。」
「ま、学ブーには関係ないでしょ!」

『!あーーーー、分かった!』
と、とつぜん素っ頓狂な声で叫ぶかつお君。 

「え?なに?イキナリ?」と、僕が聞き返すと・・・。
『この間言ってた、三年生の時バレンタインに告白された相手って、香織ちゃん?』と図星で言い当てた。
「えーー?なんで知ってるの?やだ、将太くんバラしたの?」
「僕、香織ちゃんだなんて名前まで言ってないし。」
「香織は自分で言わなくてもバレバレだっちゅーの。“将太くん好き好きオーラ!振りまいてんじゃねーよ。バーカ。」