不思議な力を持つ、
 不思議な少年。
 僕だけの親友。

 一緒に語った将来の夢。
 叶わなかった、
 一緒に大人になること。

 心臓の弱かった君が、
 どんなに望んでも、
 到底叶わなかった夢。

 スポーツをすること。

 ほんの時々、
 一緒に過ごせた、
 学校での時間。

 運動はいつも見学だけで、
 一緒に走る事も、
 戦う事もできなくて、
 分かち合えなかった、
 青春の汗と勝利の喜び。
 今、一度だけ、
 そのチャンスが
 与えられたんだ。

 勉強は君に
 到底叶わなかったけど、
 スポーツだけが
 君に誇れる
 僕だけの取り柄。

 そして、その
 スポーツで競うことと、
 それに勝った時の喜び。

 何ものにも替えられない
 充実した一瞬。
 最高の瞬間。
 
 喜びとは、
 形あるものではないけど
 目には見えないものでも、
 輝いた 想い出は、
 何よりもかけがえの無い
 贈り物になる。

 僕は絶対に勝って、
 その喜びの瞬間を
 かつお君と分かち合い、
 最高の想い出を
 僕からの
 プレゼントにするんだ。

走りながら、僕はこんな思いが心臓から泉のように湧きあがり、溢れる思いで、今までに無く胸を熱くさせていた。

そして、ただただ、夢中で走っていた。

途中向かい風が僕らを襲ってきたけど、ものともせずに10Kgもある かつお君を抱え風を切っていた。