「そうは行かねえよ。オレは一位の四班を、最終的に騎馬戦とドッジボールで圧勝して、奇跡の大逆転で優勝するんだから!そんじゃ、ゴールの方で待ってるぞ。」
『将太くん頑張ってね!』

コリンちゃんはそう言って、学君の頭の上に移動。

「うん、頑張ってくるよ。」

僕の第四班は・・・、ラス2の清君はそんなに足は速くないけど2位の2班に20メートル以上の大差を保ってくれた。それで僕がアンカーなら、もう絶対間違いなく1位になれるに間違いない!と思っていた。

・・・が、清君が、かつお君が入っているリュックを背からはずし、僕へバトンタッチする準備をしていたその時だった!

「あ!」

清君は何かにつまづいて、おっとっと、という状態になった。
僕は慌てて「清君!投げて!リュック!」と、とっさに叫んだ!
清君は、自分が転ぶ直前に僕に向かって思い切りリュックを放り投げた。けど、リュックは僕のところへ届かず・・・。しかし、投げられた勢いで、かつお君がリュックから放りだされた状態で僕の足元に来た。

『いってーーー!』

咄嗟の判断だった。

リュックを拾いに行って、大きな魚のかつお君を、またリュックに入れなおすなんてのは時間的にかなりなロスタイムだし、拾ったからってそこはバトンタッチの地点じゃない。問題はリュックではなく、かつお君を運ぶことなのだ。リレーのバトンとしてのかつお君はちゃんと僕のところに届いたのだから、僕はリュックなんて無視して、かつお君を抱きかかえ、スグに走り出すことにした。

ちょっとしたアクシデントだったけど、このアクシデントのおかげで2位との差がグッと縮まった。

「大丈夫?かつおくん、行くよ!」
『えー、走るの?今、放り投げられて全身こすったよ。マジいてーよーーー!』
「当たり前だろう!そんなの我慢だ。骨を折ろうが最後まで戦う!これが勝負なんだよ!」

ラグビーボールを脇に抱えるラグビー選手の格好でかつお君を抱え、叫びながら走る僕。
「うおぉぉぉ!」

応援する同じ班のメンバー達の興奮している声が聞こえた気がしたけど、夢中で走る僕は、そんなことどうでも良く、走ることだけに集中した。