台風は、大型、小型と、連続してやってきて、台風が明けたのは三日後、そして、桟橋が海の水面上に現れたのは更に翌日だった。だから、かつお君が死んだ日から四十九日を迎えるまで、あと二十一日しかない。

そういうワケで、今日も朝から学校をサボった。

電話で、先生がボクを心配していた。

「将太。おまえ、仲良しだった勝男が死んで、悲しい気持ちはわかるけど、クラスの皆がお前を心配しているぞ!はやく元気になって学校に出て来い。」って・・・・。

なんかさぁ、勘違いさせちゃってるみたい。先生にも皆にも悪いけど、僕にとっては、あと二十一日間だけは、かつお君と過ごす事の方が大事なんだ。

海へ着き、海に向かって石を投げると、しばらくしてかつお君が水面から大きく跳ね上がる。

ダイアモンドをちりばめたみたいに、水しぶきが太陽の光に反射して、ほんの一瞬の虹が七色に輝いた。

「うわぁ、かつお君、カッコイイ!」

僕は、この瞬間の光の中で輝いたかつお君を、きっと一生忘れないだろう。

『遅い遅い、待ってたんだよー、将太くん!』
「ごめーん。」
『あのさ、手、出してくれる?』
「手?手がどうしたの?はい。」

そう言って僕が手のひらを見せると、かつお君の口から、何かが吐き出された。

「かつお君、これ?!」
『すごいだろ!天然の真珠さ。』
「すごーーーい!しかも二個も!これ、どうしたの?」
『どうしたも、何も、・・・別にどーって事ないんだけどね。ただの貰い物。』
「貰ったって、誰から?」
『アコヤ貝様にお願いしたんだ。』
「アコヤ貝?」
『そう、知らない?よく真珠貝って呼ばれてる貝。貝達にとっては真珠なんて価値があるものだなんて思ってもいないだろうし、だけど、ボクたちにとっては・・・特別な物でしょ。特に、今のボクにとってはね。』
「もしかして、コリンちゃんにあげるの?」
『ま、まぁね・・・。でも、その、ちっさい方は、将太君の分。』
「えー?僕にもくれるのー?有難う!」