かつおくんは、僕の知らないこと何でも知っていて、羨ましいなと思った事も何度もあるけど、死んじゃってからは海の世界も見てきて、今じゃもっと色んな事知っているけど、一番肝心な、生まれ育った故郷の事を知らない。
僕たちが出会った故郷は、海と山に囲まれた自然があふれる素敵な町なんだ。
普通、小さい頃に友達になったら、一緒に駆け回ったり、昆虫を捕まえに行ったり、色んな思い出を作れたはずなのに、僕とかつお君の思い出の殆どは、かつお君のいる病院で過ごした時間ばかり。学校の遠足も、運動会も、かつお君と一緒には過ごせなかったけど、今の季節なら自然公園に行けば、赤とんぼとか、白鳥達とか、せっかちで気の早い木の葉は、もう紅葉が始まっている。
僕は、かつお君に僕たちの生まれ育った故郷の事を教えてあげたかったんだ。特に、白鳥の群れは毎年感動モノだったから、一番見せてあげたかったんだ。

人間の姿のままのかつお君が喜んでくれた時の顔が目に浮んで、ちょっとだけ、胸がギュッとなった。

もしも、人間の姿のままのかつお君が白鳥達と出会っていたら、どんなふうに仲良くなっていたんだろう?

白鳥とかつお君かぁ。
絵になるよなぁ・・・。
それは、もう叶わないことけど・・・。

悲しいからなのか、嬉しいかったからなのか、思い浮かべたその顔が、懐かしかったのか、区別が付けられない感情が僕の胸をいっぱいにした。