「へ、へぇ~。な、なんか、照れるなぁ・・・。」
『なんかそれって、嫌いな人参とか苦い薬を飲み終わった後の神様からのご褒美みたいで、その後もイチゴの飴はボクにとってちょっと特別なものになってたんだよ。』
「へぇ~。」
『それから、お医者さんごっことか、看護婦さんごっことか。』
「いやぁん。そんなコトして遊んだなんて、恥ずかしいわ。」
「そんなことがあったね。僕も思い出した。」

と、僕もつい話しに参加してしまった。

「かつお君が、『シャツを脱いで』って言って、僕や海那美ちゃんが言われるがままにすると、玩具の聴診器つけて、お医者さんのように診察の真似っこして『もう大丈夫ようだねぇ。あと二日もすれば元気に退院だ。』って・・・笑って言ってて。」
「そして、将太君が「じゃぁ、次はまさお君の番です。シャツを脱いで下さい!」って言ったら、ボクはいいよ。っ言って逃げ回るもんだから・・・」
「そうだった。僕と海那美ちゃんがかつお君を追いかけ回してて・・・。」
「そう、その時、まさお君、突然発作起しちゃって、すごく苦しそうで、タンカで別の部屋に運ばれちゃうし、そのまま死んじゃったらどうしようって思ってた。」
『そうだ、そういえば・・・その二日後、二人とも退院しちゃっていなくなってて、すげー淋しい思いしたの思い出した!』

「ねぇ、まさお君・・・私、まさお君死んじゃってすごく悲しかったけど、まさお君、病気辛かった?心臓発作ってものすごく苦しいんだよね?
私、まさお君のあの時の苦しそうな顔、忘れられないの。血の気がなくなったように顔色が変わって、一気にあふれ出た脂汗のようなもの。細かく乱れた呼吸とか、うつろに意識を失って行く目。苦しそうに唸る声まで今も鮮明に覚えてる。
目の前で心臓発作を起したまさお君を見て、私、生きた心地しなかった。
好きな子が死んじゃうっていう最悪な予感が頭をよぎって、怖くて怖くて眠れずにずっと震えてた。
思い出すだけで、時々思うんだ、私。まさお君、もうあんな苦しい思いしなくていいんだよ。良かったねって。
人の死を良かったねって思う私って、酷い人なのかなぁ・・・。だけど、本当にそう思うんだ。」