「私が生まれて初めて人を好きになって両思いになれた時の恋バナよ?過去形でも聞く権利あるでしょ?」

すると、理絵ちゃんが・・・。

「ちょっと妬けるけど、私も聞きたい。」と涙顔で微笑んでいた。
『理絵ちゃんまで。』
「恋のライバルだったかもしれないけどさ、まさお君が、どんな風に人を好きになってたのかな・・・とか、興味あるじゃん?」

「僕も聞きたいな、二人の馴れ初めを。」と、割って入ったのは薫君。
 
『馴れ初めなんて、言うなよ。結婚した新婚夫婦じゃあるまいし。』
「聞かせろ聞かせろ。」

そして、ゆっくりと海那美ちゃんが涙にぬれた瞳を閉じて、生きてた頃のかつお君の姿を思い浮かべながら、かつお君の声だけを聞くように、心の準備をととのえた。

『その・・・、海那美ちゃんってさ、甘ったれで可愛かった。』
「甘ったれって、私のどんなトコが?」
『えっと、・・・人参食べれなくて、食事時になると人参だけ残したお皿、ボクのところに持ってきて、「まさおくぅーん、人参たべてぇー。」って、泣きついて来た時が可愛かった。』
「うん、確かに食事中どっか飛び出して行ってた。」

僕もあの頃の古い記憶にかかった霞を必死で掃いのけて、病院の風景を思い出すことに集中しながら話を聞いていた。

「その時人参食べてくれてたまさお君が、私の救世主だったのよ。それで好きになっちゃったのかも?!」
『実はあの頃、ボクも人参嫌いだったの。』
「えぇ?!そうだったのぉ?」
『だけど、女の子に弱いところ見せたくなくて、カッコつけたくて、平気なフリして食べてたんだ。今思えば、ボクが人参嫌い克服できたの、海那美ちゃんのおかげだったんだね。』
「あとは?私のどんなトコ見てくれてたの?」
『うーん、イチゴの香りがしてた。』
「イチゴ?」
『そう、いつもイチゴの飴を口に入れてて、話すとその息がイチゴの甘い香りがしてたんだ。』
「ハハッ・・・それ、今も好き。イチゴミルク・・・。そんなトコまで見てくれてたんだ。」
『うん。そしてね、嫌いな人参食べ終わって、苦い薬も飲み終わったボクに「まさお君も食べる?はい。」って、差し出してくれたりして、その時のにっこり笑う笑顔がスゴク可愛かった。』