もし、一学期のうちに海那美ちゃんがかつお君に告白していたら、かつお君の初カノは海那美ちゃんだったのかもしれない。

または、理絵ちゃんが贈り続けたお花に秘められてたメッセージを、かつお君がもっと早くに気づいていたら、かつお君の初カノは理絵ちゃんだったかもしれない。

でも、もしそうなってたら、初カノが海那美ちゃんだったとしても、理絵ちゃんだったとしても、そのどちらかは、カレシが死んじゃったことになってて、そうすると、今よりもっとショックで・・・。

それなら、そうならない今の状況の方がまだマシだったかもしれない・・・。

あぁ、でも、切なすぎて、涙が止まらないよ。

『あ、ありがとう。海那美ちゃん。理絵ちゃん。
ボク、今日、すごく嬉しい。さっきも、ちょっと言ったけど、入学する前に出会った海那美ちゃんの事、実はボクも好きだったし、ボクの初恋は叶ってたんだよね。って、今更、魚の姿でこんな事言っても全然カッコ良くなくて嬉しくないだろうけど。
そ、それから理絵ちゃんも、もっと早く理絵ちゃんのお花のメッセージに気づいてあげられてたら、理恵ちゃんの事、好きになってたかもしれないのにね。ボクって、全然カッコ悪くて、こんなボクだけど・・・、い、生きてたら、な、仲良くなれたかも知れなかったのに・・・し、死んじゃって・・・ゴメンネ。』

かつお君が、そう言い終わると、海那美ちゃんが理絵ちゃんに抱きかかえられているかつおくんにソロリと両手を伸ばした。

「ま、まさお君、あのさ、も、も、もっかい言ってくれる?その、さっきの、小さい頃のその、気持ちとか? 私も、私目ぇつぶってまさお君の声で聞いてみたい。理恵、まさお君かして。」

そう言って、理絵ちゃんの抱きしめているかつお君を奪って、今度は海那美ちゃんがかつお君を抱きしめた。

「ね、お願い。もっかい言って?」
『え?その、昔、ボクも海那美ちゃんのこと好きだった・・・ってこと?』
「うん。」
『そんなの、改めて言えって言われても・・・、恥ずかしくて言えないよぉ。』
「じゃぁ、私のどんなトコ、好きになってくれてたの?」
『だから恥ずかしいでしょ、それは。』
「き、聞きたい。教えて!」

海那美ちゃんの力が、さらに強くかつお君を抱きしめた。