ひのの言い方だと、朝一緒に目を覚ましたみたいだ。

それを指摘すれば、不思議そうに首をかしげた彼女は、「昨日夕李が家にきたの」となんでもないように言う。



「昨日晩ご飯うちで一緒に食べて、そのあと帰る予定だったんだけど。

……夕李の自転車のチェーンが切れちゃって、家同士はそんなに遠くないんだけど、帰るの面倒じゃない?ってわたしが言ったから泊まったのよ」



「……んじゃ今日電車通学〜?」



「うん。朝一緒に電車乗ってきたの」



「親もよく許してくれたな〜」



「だって地元田舎だから、わたしの両親とも昔から顔見知りなのよ?

幼なじみが泊まりに来たようなものだから、いちいち気にしないわよ」



彼氏が泊まった上での、ひのの寝不足。

……ともなれば、普通に考えて、俺らの脳内じゃ導き出される答えはひとつなわけで。




「ひのさ〜、彼氏と夜、」



「みや」



「なんだよ綺世〜。気になるでしょうに」



「本当にそうだったら、ひのが平然と話すわけないだろ」



……まー、そうだわな。

そういうヤツだわ、とひのを見れば、「なに……?」とひとりだけ理解できていない顔。あきれたようなため息もこぼしたくなるようなその表情を見ても、顔色ひとつ変えない綺世は。



「あんまり見られないようにしとけよ。

……まあお前に彼氏がいるっていうのは、もうかなり広まってるけどな」



心底穏やかな声でひのをなだめて、髪を撫でてやっていた。

それに「ありがと」と返すひのの無防備さには、相変わらず呆れる。……もし彼氏の前で平然と頭撫でられてたら、彼氏は絶対嫌だろーな。