え、とぱちぱち瞬きを繰り返すひの。

驚いたというよりは、本気でどうしてかわからないと言いたげな瞳。……たしかに、信じられないんだろう。



「一目惚れ」



「っ、」



……ああ、まったく考えてなかったわけではないのか。

じゃなきゃそんな反応は見せねえもんな、と頬を赤く染めたひのを見下ろす。つないでいる指が、もどかしげに俺の手の甲を撫でた。



「そ、んなこと言われても、」



「いつ好きになったんだって聞いたのはお前だろ?」



「で、でも……

そのときわたしに彼氏がいたかもしれないし、もしかすると聖蘭を受験してなかったかもしれないじゃない」




……だから言ってるだろ、もしも話は好きじゃねえって。

もしも、なんて有りもしなかった過去や未来の話を口に出したところで、結局はただ自分に都合の良いバーチャルの世界だ。



「かもしれねえけど。

……お前は聖蘭を受験したし彼氏もいなかった。だから、俺は入学した初っ端からお前のこと口説いてただろ」



「わたし口説かれてたのか……」



自覚ねえところがひのらしい。

明らかに誘って口説いてただろ。お前があまりにも俺に対して意識してるそぶりを見せねえから、幹部にも散々ネタにされたけどな。



「……でも、案外あっさりオチたな」



「だって初対面だと思ってたのに出会って数日で「付き合わないか?」って提案されたのよ!?

おどろくけどどう考えても意識するに決まってるじゃないっ……!」



インパクト強すぎる。

そう言って頬をふくらませるひのに「悪かったよ」と謝るものの、完全に口元がゆるみまくってるあたり悪気はない。……ひのが意識した結果オチたんだとしたら、俺の作戦勝ちだな。