喜怒哀楽が､全てのものが帰ってきたら･･･

そいつは初め着ていた服を着ていた。
｢そうじゃなくて何で同じ服を着てる?｣
｢･･･?｣
訳の分からないような顔をして黙り込んだと思ったら少しして



｢服が乾いたからです。」
｢本当に乾いたのか？」
｢･･･はい。｣

俺はそいつの服を触ってみるとまだ濡れたままだった。ほんの少しだけは乾いているのかもしれないがそれは本当に気付くか気付かない程度のもので全然乾いては居なかった。

「まだ濡れてると思うんだか？」
「えっ？でも・・・」
「でも？」
「すぐに乾くからそのままでいいと・・・」
「・・・そうか、だかすぐに乾くような濡れかたじゃないと思うぞ。」
と言うかそいつの服は初めの時よりも濡れている気がした、多分風呂場にいたときに濡らしたんだろう。
「？何故ですか。」
そしていっている意味が分からないと言いたそうな顔をした。

「・・・分からないならいい。
それより、お前家はどこだ？」
「家、ですか？」
「そうだ、とりあえずお前の家に電話しておくから。
電話番号分かるか？」
「分からないです、すみません。」
「お前・・・一人暮らしか？」
そう聞くと少し間を開けてから
「ち、違います・・・。」

こいつが家の電話番号を知らないのは予想外だった。
しかも一人暮らしじゃない。
一人暮らしじゃなかったら親も心配してるはず、だが電話番号が分からないのならこいつの親に連絡することは出来ない。

「親の携帯番号とか勤め先なら分からねえか？
電話かなにかしないと親が心配するだろ？」
「・・・・・」
「・・・どうした？」