左手であたしの体を押さえ、右手で羽を引っ張る。


ボンドは皮膚と羽をしっかりとくっつけているため、簡単にははがれない。


蝶の羽はボロボロと落ちていき、陽介君の手には鱗粉が付く。


それでも羽は頑丈にくっついていて、引っ張らる度に皮膚がビリビリと避けていく感覚が体を襲った


「おかしいな。もっと簡単に取れるはずなのに」


陽介君はそう呟き、首を傾げる。


「皮膚が裂けちゃう! やめてってば!!」


叫び声をあげ、陽介君の手の中で必死でもがいた。


その時だった。


あたしの指の爪が陽介君の指に食い込んだ。


それに気が付かず、そのまま勢いよくひっかく。


「いてっ!!」


陽介君が声を上げて手を離した。


その瞬間あたしは転げるようにして机の上に逃げた。


大きく呼吸を繰り返し、背中の痛みに耐える。


背中から血が出ているかもしれないと思い、そっと手を当てる。


そこには熱を持ってただれた皮膚があり、すぐに手をひっこめた。


血は出ていないようだけれど、見るのも恐ろしい状態であることには変わりない。