小さく震えながら目を閉じていると、不意にドアが開く音が聞こえてきてあたしは顔を上げた。


陽介君もハッとしたように図鑑から顔を上げる。


ドアを開けたのはミィだった。


その姿に陽介君が大きく息を吐き出し、ドアを閉めた。


「驚かすなよ」


ミィを睨んでそう言う陽介君。


家の人じゃなかったことに落胆しながらも、あたしは体を起こしてミィを見た。


ミィは真っ直ぐ机の前までやってきて、ジャンプして机の上に飛び乗った。


あたしは思わず後ずさりをした。


「おい、そいつを食べるなよ」


陽介君はそう声をかけるが、本気で心配している様子はなかった。


それは飼い猫のミィを信用しているからなのか、それともあたしの命なんてどうでもいいと思っているからなのか、抑揚のない声ではそれもわからなかった。


ミィは丸い目であたしを見つめる。


あたしは息を殺してミィを見た。


ミィはあたしを食べる気はないようで、机の上でリラックスしたように体を伏せて目を閉じた。


その仕草にホッと胸をなで下ろす。


定期的な呼吸を繰り返すミィを見て、あたしはそっと近づいた。