ふと気が付くと、あたしは椅子の上にいた。


天井を見上げて自分が生きていることを確認する。


和が手を伸ばしてくれたように感じたけれど、あれはただの幻想だったようだ。


この部屋に和はいない。


上半身を起こしてみても、どこも痛みを感じなかった。


不幸中の幸いだろうか。


椅子のクッションのお蔭であたしは無傷だったのだ。


でも……立ち上がってみて、机までの距離に愕然としてしまう。


とうてい届かない距離だった。


手を伸ばしても、背伸びをしても、ジャンプしても届かない。


このまま朝になって、あたしが椅子の上にいると知れば陽介君はどうするだろう?


考えるだけで背筋は寒くなった。


あたしが逃げようとしたと思い、激怒する姿が目に浮かんできた。