捨てられているという可能性はきっと低い。


陽介君はあたしの周辺にあたしが無事であるというデマを送らなければならないからだ。


誰かからメールがくればあたしになり切って返信をしているはずだった。


でも、小さなスマホは充電ができない。


見つけ出して助けを呼ぼうと思えば、そのタイムリミットは限りなく近づいてきていることになる。


あたしは本の隙間を調べ終えて大きく息を吐き出した。


本にたまったほこりを随分と吸い込んでしまった。


机の上には出しっぱなしにされているペンケースが置かれている。


あたしの背中に羽をくっつける時のボンドを取り出したのだろう。


あたしは紺色のペンケースへと向かった。


チャック式のへらべったいペンケースは少しだけ開けられたままになっていた。


あたしはその隙間に片足を滑り込ませた。


あたしが入り込んだことでチャックが少しずつ開いていく。


半分ほど開いたところであたしはペンケースの中を調べ始めた。


普段は当たり前のように使っているシャーペンや消しゴムが、今は大きすぎて持ち上げるのに苦労する。


鉛筆なんて、大きな木材のようだ。


「ない……」


探してみてもその中にあたしのスマホはなくて落胆のため息を吐き出した。


こんな場所にあるわけがないと思っていても少なからずショックだった。