鏡の前で茫然と座り込み、それでも涙だけは流れ続けていた。


そんなあたしを見て雄介君は首を傾げた。


「なんで泣いてるんだ?」


そう、聞いてくる。


本当に不思議そうな表情を浮かべて。


「なんで……こんなひどい事をするの……?」


さっきの叫び声とは裏腹に、聞き取れるかどうかもわからないような声が出た。


「なんでって、お前を綺麗にしてやったんじゃないか」


雄介君はそう言い満足そうに笑う。


綺麗?


これが?


ボンドで張り付けられた蝶の羽のどこが綺麗なのか、あたしには理解できない。


無理矢理つけられた箇所は赤くなってきていて、熱を帯びているのがわかった。


ボンドの匂いで頭も痛くなってきている。


「すごく綺麗だ」


陽介君はそう言い、あたしについた蝶の羽を優しく撫でた。


鱗粉が舞い、せき込む。


これが陽介君が望んでいた『ムシ女』の姿なのだとしたら、ひどすぎる!