☆☆☆

夢を見ていた。


いつもの学校の夢。


美衣と2人で笑いあう休憩時間。


放課後は和とデート。


なにも変わらない、幸せな1日。


和と街中を歩いていると一匹の黒猫があたしたちの前を通り過ぎて行った。


「黒猫って、縁起が悪いよな」


和がそう言い顔をしかめた。


だけどあたしはその黒猫に釘付けになる。


「ミィ?」


通り過ぎた黒猫にそう声をかけた。


黒猫は立ち止まり、振り返る。


大きなその目はあたしを憐れんでいるように見えた。


「あの猫を知ってるのか? ミィって、美衣と同じ名前だな」


和がそう言い、おかしそうに笑う。


あたしはそんな言葉を気にせず黒猫に近づいて行った。


「おい、百合花?」


和の声が後方に聞こえて来る。


その瞬間。


あたしの体は小さくなり、瓶の中に入っていた。


瓶の中から見えるミィは巨大で、そして歪んでいる。


「にゃぁ」


ミィがひと声鳴いて、あたしに背中を向けた。