翌日。


あたしは一睡もできずに朝を迎えていた。


足から流れていた血は止まったが、痛みはまだ続いている。


7時のアラームが鳴り響くと、あたしはビクッとして身を縮めた。


布団の中の雄介君が寝返りを打ちアラームを止めて時刻を確認した。


「学校は休みなんだから、こんな時間に起きなくていいのにな」


そう独り言をいって欠伸をする。


何気ないそんな行動を見ているだけなのに、あたしの心臓はドクドクと鋼のように打っている。


「朝飯食ってくる」


陽介君はそう言うと、あたしと机の上に戻して部屋を出た。


その後ろ姿が見えなくなるとあたしはようやく緊張を解いた。


いつまでこうしていればいいんだろう?


陽介君はあたしを解放する気があるんだろうか?


ぼんやりと部屋の中を見回す。


沢山の標本に、沢山のトロフィーや賞状が飾られている。


陽介君は本当に虫が大好きなんだろう。


その愛情がいつの間にか歪んでしまい『ムシ女』という架空の虫まで作り上げてしまったんだ。


いつからそんな事になったのか、あの沢山のイラストを見ればそれがつい最近ではないということだけは理解できた。


「家に帰りたい……」


うずくまって座り、そう呟いた。