見上げてみるとコルクの栓がしっかりとはめられている。


仮にこの瓶の外へ出る事ができたとしても、この机の上から下りる事ができないだろう。


ジャンプして無事に着地できるような高さではなかった。


フローリングの床が今は固いコンクリートに見えた。


「どうしよう……」


そう呟き、どうにか脱出することができないかと周囲を見回した。


机の上には沢山の本。


それ以外のものは見当たらない。


雄介君があたしをここへ移動させたときに全部片付けたのだろう。


あたしは雄介君の寝顔へ視線を向けた。


まだまだ幼さの残るその顔の裏には、恐ろしい狂気が隠されている。


その狂気を身を持って体感したあたしは、もう陽介君を普通の同級生だなんて思えなくなっていた。


「逃げなきゃ……」


あたしはまた呟いて、瓶に体当たりをした。


足には力が入らず肩が痛む。


だけど、何度も何度も体当たりを繰り返した。


瓶ごと床に落下させてしまおうという考えだった。


瓶が横倒しになればコルクの栓を外すことができるかもしれない。